AI活用の相談で必ず出るのが「情報を入れてしまって大丈夫なのか」という不安です。もっともな心配ですが、答えは「全部ダメ」でも「全部OK」でもありません。線引きを決めれば、安心して使えます。
「怖いから使わない」が一番高くつく
情報漏えいが怖いからAIを禁止する。気持ちは分かりますが、これには隠れたコストがあります。禁止された社員は、こっそり個人のスマホで使います。会社が把握できない場所で、ルールのないまま使われるのが実は一番危険です。
必要なのは禁止ではなく線引きです。「これは入れてよい」「これはダメ」「迷ったらこうする」の3つが決まっていれば、AIは安全に使えます。
入れてはいけないもの
まず、明確にダメなものから。以下は、有料版・無料版を問わず、原則として入力しないルールにすることをおすすめします。
なお、多くのAIサービスには「入力内容を学習に使わせない」設定や、法人向けの契約形態があります。業務で本格的に使うなら、まずこの設定を確認するのが第一歩です。
- 顧客・取引先の個人情報(氏名・住所・電話番号・口座など)
- 未公開の経営数値(決算前の数字、原価、給与)
- 秘密保持契約(NDA)の対象になっている他社の情報
- パスワード・APIキーなどの認証情報
- 特許出願前の技術情報・レシピなど、公開されたら価値を失うもの
入れてよいもの・匿名化のコツ
逆に、次のようなものは入れて構いません。すでに公開されている情報、一般的な知識に関する質問、そして固有名詞を伏せた業務文書です。
コツは「A社のBさん」方式です。実際の見積依頼メールをAIに要約させたいときは、社名と担当者名を「A社」「Bさん」に置き換えてから入れる。これだけで、文面の内容はそのまま活かしながら、個人情報・取引先情報の入力を避けられます。置き換えの手間は数秒で、得られる下書きの価値のほうがずっと大きいはずです。
社内ルールは1枚でいい
ルール作りというと分厚い規程を想像しがちですが、小さな会社なら1枚で十分です。「入れてよいもの・いけないもの・迷ったら誰に聞くか」の3項目を紙1枚にまとめ、全員が見える場所に貼る。それだけで、こっそり使いによる事故のリスクは大きく下がります。
当方でも、製造業のお客様の社内向けAI安全活用ガイドラインの作成をお手伝いした経験がありますが、現場で機能するのは結局「シンプルで、迷ったときの行き先が書いてあるルール」でした。完璧な規程より、全員が覚えられる1枚。これが実感です。