見積書と請求書は、どんな商売でも毎月必ず作ります。それなのに「1枚に何分かかっているか」を測ったことがある人はほとんどいません。自動化の話は、便利な道具の話ではなく、この数字を知るところから始まります。
まず、時計で測る
次に見積書か請求書を作るとき、スマホのストップウォッチを回してみてください。測るのは、書き始めてから相手に送るまでです。だいたい、次の5つの工程に分かれます。
- 品目と数量を決める(今回は何を、いくつ)
- 宛名・日付・番号を打つ(前回のファイルを開いて書き換えることが多い)
- 金額を計算し直す(単価×数量、小計、消費税、合計)
- 体裁を整えて保存する(ずれた罫線を直す、PDFにする、ファイル名を付ける)
- 送る(メールに添付する、送ったことを控えに書く)
測ってみると、たいてい「思ったより長い」か「1枚は短いが、月に何度もある」のどちらかです。計算例として、1枚12分で月に20枚なら、月4時間。年にすると48時間、丸2日ぶんが帳票の体裁を整える作業に消えています。この数字は業種や人によって違うので、ぜひ自分の数字を出してください。
人の仕事は、5つのうち1つだけ
5つの工程を見直すと、人が判断しているのは最初の「品目と数量を決める」だけです。残りの4つは、決まった品目から機械的に導けます。宛名は顧客台帳にある、日付は今日、番号は前回の次、金額は掛け算と足し算、体裁はひな形、送り先は台帳のメールアドレス。
つまり判定基準はひとつです。その工程は「選んでいる」のか、「写している」のか。選ぶのは人の仕事、写すのは機械の仕事。見積書づくりの時間の大半は、写す作業でできています。
道具は、もう持っている
専用の請求書ソフトを買わなくても、スプレッドシート1枚で、この「写す」部分は機械に渡せます。宛名は顧客の一覧から選ぶ。品目は品目の一覧から選ぶと単価が入る。金額・消費税・合計は数式。体裁はシートそのもの。できたら「ダウンロード→PDF」です。プログラムは要りません。
「数式が書けない」は、いまは壁になりません。「品目を選んだら単価が入る式を書いて」とAIに日本語で頼めば、貼るだけの式が返ってきます。当方が講座で使う請求書のシートも、数式だけで作っています。ボタン1つで全部やってくれる仕組み(プログラム)を足すこともできますが、承認画面や設定でつまずく人が多いので、最初の1枚には勧めていません。
それでも、先に決めておくべきことが2つあります。当方はAI導入の講座で、つまずきどころを「壁」と呼んで整理していますが、帳票で効くのは「壊れる壁」と「預かる壁」です。壊れる壁は、式が消えたり列がずれたりしたときに誰が直すか。数式だけなら、壊れた場所が画面に見えるので、自分で直せる範囲に収まります。預かる壁は、そのファイルが誰のドライブにあって、誰に編集させるか。共有を「閲覧」と「編集」で分けるだけで済みます。
順番:1枚だけ自動にして、1か月回す
全部の帳票を一度に変える必要はありません。進め方はこうです。
- 見積書か請求書、どちらか1種類だけ選ぶ(月の枚数が多いほう)
- いまの請求書の見た目をそのままシートに写し、顧客と品目の一覧を別のシートに作る
- 宛名と品目を選ぶだけで金額が出て、PDFにできるところまで整える
- 1か月、今までのやり方と並走させて、時間と間違いの数を比べる
1か月後にもう一度ストップウォッチを回してください。最初に測った数字との差が、この自動化の値段です。差が出ていれば次の帳票へ、出ていなければ設計を見直す。判断の材料は、いつも自分で測った数字です。
まとめ
見積書づくりを速くする第一歩は、道具を探すことではなく、何分かかっているかを測ることです。測れば、5つの工程のうち人の仕事は1つだけだと分かります。残りの4つは、手元のスプレッドシートの数式とひな形で機械に渡せます。壊れたら誰が直すか、ファイルは誰のもので誰に編集させるか。この2つを決めてから、1枚だけ、1か月だけ。
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